【1】はじめに

 “データベース(database)”という言葉は、現代の私達にも耳慣れたものとなってはいるが、「では、あなたは自分の業務でデータベースを使っていますか?」というと、なかなか「そうだ」と言える方は少ないのではないだろうか?
 もちろん、大企業にお勤めの方には「自分が業務で使っているコンピューター・システムでは、データベースを使用しているはず」と言われる方は多いはずだろうが、「では、あなたはそのデータベースの中のデータを効率良く使用していますか?」というと、これまた「そうだ」と言える方は少ないのではないだろうか?

 ワープロ・ソフトや表計算ソフトに(コンピューター・システム等から出された情報を)手作業で再度打ち込み、多くの報告書や分析資料を毎月毎週作成する。
 こういった“非効率な作業”が日常化しているのは、たとえ“データベースを使ったコンピューター・システム”がある大企業の方といえども、決して少なくはないはずだ。

 元々“データベース(データの基地)”とは「コンピューターで、相互に関連するデータを整理・統合し、検索しやすくしたファイル。また、このようなファイルの共用を可能にするシステム。(「大辞林」)」であって、“データの整理・統合”と“データの検索性・共用性”とがその大きな特徴となっている。
 にもかかわらず上述の様な“非効率さ”が生まれる背景には、次の2つの事情があると考えられる。

1)コンピューター・システムは“高値の花”
 会社というものは、(主に対外的な)基幹業務に関しては、何千万円・何億円というお金を出してシステムを作ってくれるが、(主に内部使用の)各種の報告書や分析資料作成のためには、ほとんどお金を出してはくれない。このため、自然と“お金のかからない”ワープロ・ソフトや表計算ソフトにデータを手作業で打ち込む様になってくる。

2)“データベース・ソフト”は難しい
 マイクロソフト社製の「Office」製品には、ワープロ・ソフト「Word(ワード)」表計算ソフト「Excel(エクセル)」と共に「Access(アクセス)」という「データベース・ソフト」がある。ところが、いざAccessを勉強しようと、巷に出ている入門書を読んでみても良く分からない。“掲載されているサンプル”を真似てみても、結局応用が利かない。ちょっと上級の書籍を見てみると、今度は「VBA(ブイ・ビー・エイ)」というプログラム言語の話が中心で、とても素人には手が出ない。仕方が無いので、使い慣れたワープロ・ソ

 以上のことは、恐らく多くの方が、経験し、又は、感じられていることでは無いだろうか?

 そこで、本書では、Accessに関する「巷の入門書と上級書との中間にあるもの」を目指して、「データベースを中心としたコンピューター・システムを手軽に作成してしまう、やり方(=お作法)」を、説明するものとした。

 なお、本書で説明する“お作法”は、次の二方針を前提としている。

1)プログラム言語は使用しない。
 Accessのプログラム言語である“VBA”は使用しない。

2)画面帳票のレイアウト等は、凝った作りにはしない。
 Accessで簡単に作成できる画面帳票のレイアウトを採用するなど、凝ったものは作成しない。

 また、本書のもう一つの方針として、「データベースの設計に際しては、概念DOAを適用する」こととした。
 これは、筆者が“概念DOA”の啓蒙活動を行っていることもあり、より良いデータベース設計には必要であると考えているからである。

 なお、本書は“Accessの操作説明”にはほとんど触れていない。これは、操作説明のために画面の画像などを掲載すると、非常に多くのページを必要とし、かつ、アクセスのバージョンが変わってしまうと、掲載した画面画像が古いものとなってしまうからである。実際の操作手順に関しては、別途、入門書などで学習されたい。

 併せて、本書は数多ある“専門書”の体裁は採らずに、拙著「どこでもDOA」同様、“読み物”としての体裁を採らせていただいた。
 まずは軽い気持ちでお読みいただき、何かを感じ取っていただければ幸いである。

平成25年3月

筆者